warnings scooped up by water senders
walls in the elevator of Regina Gauger Miller Gallery
Carnegie Mellon University, Pittsburgh
水主によって掬い取られた警告たち/エレベーターの中での展示
Pittsburg Note- 3

水主によって掬い取られた警告たち

GROUNDWORKS展の会場は、ギャラリーの1階から3階までを使用している。見て回るには、エレベーターを使ってもよし、階段を使ってもよい。いや、その両方とも、単に移動空間としてあるのではなく、今回の出品アーティストの展示空間として使われている。もっとも利用者の多いエレベーターにも展示しているのは、実は私、池田一である。
「水主によって掬い取られた警告たち」というタイトルをもつ「水を掬う手」の8枚の写真の掲示は、当初から主催者に申し入れていた。しかし、会場に着くと、用意されていたスペースは、「水駅伝プロジェクト」のプレゼンテーションの横の、こぎれいな展示用の壁だった。咄嗟に、ここではない、もっと日常的なスペース、例えばギャラリーの入口とか---。その私の訴えに、今回のディレクターの一人で、出品アーティストでもあるReiko Gotoが、「なら、エレベーターの中がいいよ」と勧めてくれた。エレベーターに乗り込むと、四方の壁の、キラッとした金属の光沢が、乗り合わせた人物をも映し出すようで、なかなか魅力的なスペースである。直ぐに使用許可が下りたので、さて作業と思うのだが、それが意外と容易ではない。どこかの階で呼んでいるので、昇降する中で作業しなければならない。それに、会場設営のために、いろんなものが積み込まれる。なかなか捗らない作業に少し苛立っていると、ギャラリーの技術担当のキャラさんが、止めたままにして作業すればいいと、操作手順を教えてくれる。エレベーターの利用者には不便をかけるが、その理由が正当ならば、誰もが理解する。
1988にニューヨークのFranklin Furnaceでの個展の後の、後片付けのことを思い出した。パフォーマンス・スペースの壁を黒色から白色に塗り替えさせてもらって、使用していたので、展覧会後、元通りに復元するのが当然だと思っていた。それに対して、ディレクターのマーサー・ウイルソンは、「それは、次に使う人の問題でしょう。この白い壁がいいかもしれないのだから」。なるほど、考えれば、この方が正論だ。空間が先にあって、人はその空間のルールに従うというのは、本末転倒である。エレベーターの中の作業が、俄然、捗ったのはいうまでもない。
展覧会が始まると、当然何人もの人がエレベーターに乗り合わせてくる。動かない壁面の展示なら、いやならそのまま通り過ぎればいいのだが、ここでは「「水を掬う手たち」が目的階に着くまで、ついてくる。鏡のような光沢の中のそれらは、人格のあるような存在として、周りを取り囲んでいる。ギャラリーのディレクターのジェニー・ストレイヤーは、「capture(捕獲)された感じ」と、感想を語った。この「水主によって掬い取られた警告たち」という写真の展示は、いままで何回かあったが、ここで再び命を吹き込まれたような、甦ったような気がしたものだ。「やっと、もの孝行ができた」と、思っている。

水に関する「8つの警告」

世界中の75%以上の人が、毎日の生活のために50リットルの水しか供給されていない。普通の生活を営むには、少なくとも1日当たり80リットルの水が必要である。
水に関連した病気で、子供が、8秒に一人の割合で、死亡している。
世界の人口の増加で、2025年には今より1.4倍水を必要とする。
世界人口の50%の人が、整備された水道設備のんす厳しい環境で暮らしている。
20世紀の半ば以来、消費される水の量は、3倍に増加している。
発展途上国での病気の80%は、汚染された水に起因している。
現在、26ヶ国で3億人の人が、水の供給が不十分な環境にある。
水質汚染のため、淡水魚の品種の20%が、絶滅の危機に瀕している。
Regina Gouger Miller Galleryの1階から3階の間のエレベーターの壁に展示された、水主の手。手の中には、掬い取られた「水に関する警告」が読み取れる。

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